研究情報

研究目的

①真言密教の研究への新たな研究ツールの提供

 本来、密教の歴史的資料(聖教類、儀軌・口訣、次第など)は基本的に正式な灌頂の儀式や、各個人の導師である阿闍梨の伝統に基づく口伝を通じて、師から弟子へ継承され、師資相承が厳儀であった。そのため、未灌頂(資格のない)者が、阿闍梨の許可を得ずに、聖教、口訣等を読むことは、密教では重罪とされた。つまり、密教の貴重書などのアーカイブが存在しない理由の一つは密教が師資相承を基調とした「秘密の教え“Esoteric Buddhism”」であるからと推測される。資格のない者が密教の教相(理論)、事相(行法)に触れること自体が、越法罪に該当した。現在でもなごりが残っており、行者は阿闍梨の伝授をはじめて受けて修法が許可される。本の知識では本当の意味で密教を理解できず、伝授は密教の修法のスターターの役割を持っている。一方で、密教学では僧籍をもたない研究者も多く、オリジナリティに富んだ研究が発表されている。これまで、弘法大師の著作は定本弘法大師全集を利用した研究が基本的な研究スタイルであったが、近年の情報メディアの急激な変化により、SAT大正新脩大藏經、台湾CBETAのようなデータベースを活用した仏教学の研究手法が主流になる。大藏經の縦断検索により、一つのキーワードの仏教史的な解釈、変遷を推測することが容易になった。師資相承を基調とする密教においても、かようなツールのニーズは高く、また弘法大師の著作の縦断検索により、これまで、あたりまえのように横たわっていた、フレーズに新たな解釈や意味の変遷が抽出可能になる。1巻のテキストデータに時代ごと(平安~江戸期)の写本・刊本を連動させ、これまで不明だった事象が容易に解明されることは確かなことと言える。世界的にも密教の聖地は数少なく、1200年前、弘法大師により唐より請来された密教に新たな研究の光を提示することになる。高野山は多くの人々の信仰によって支えられ続けられ、今なお時を刻んでいる。そして高野山という聖なる境界はUN COMMONS(結界)として機能し、高野山アーカイブは「至高性」の高いアンオフィシャルリアリティーを再浮上させる装置としての役割を担っていくであろう。

②高野山に関する密教学研究の深化・促進

 アンコモンズ(結界)としての密教が一般に公開されることにより、密教という性質の非公認の共有がおこる。それは密教のオフィシャルブランドとしての開放であり、高野山アーカイブというデジタルの仕掛けた、創造性の開放である。創造性は、固定化が目的ではなく、創造性=柔軟なモジュールを「多様性」との連携によって組み込むことで活性化される。包摂の思想が密教の根本命題であり、多用な人材をを組織化し、場を形成する。これが高野山アーカイブというブランディング戦略である。高野山アーカイブはあたかも、紙面媒体にメモや、線を引き、書籍に関与するように、電子化されたテキスト、写本にタッチペンで関与し、辞書機能により、利用者に応じた解釈、個々の文脈を生成し、グループ化機能を想定する。

③地域の再発見(国際観光都市)

 昨年の開創1200年の、高野山はおよそ年間200万人の観光客が訪れた。これまでの最高の観光客数を記録している。特に近年では世界遺産として、外国人観光客の増加が著しく、宗教都市から国際観光都市へ移り変わっている。高野山観光局などは外国人向けのパンフレットなどを配布しているが、地図を片手に目的地を探す、外国人の姿が目立つ。本事業では、内外の観光客へ向けての、GPS機能を付けた、現代地図と古地図の連動アプリを計画する。高野山の古地図は江戸期から奈良時代までのものがあり、初期目的では現代地図と江戸期の地図にメタ情報を付与したアプリの開発を検討している。元々は弘法大師著作集の高野山内の写本の出典情報を地図に連動させることを前提としたものであったが、町役場や観光協会と連携して、内外の観光客が必要とする情報(寺院情報、地域の飲食店・カフェー情報、スポット情報など)を増やしていき、初期のプロトタイプでは、江戸時代(1706年)の地図と連動させることで、過去と現在の歴史探訪が可能なように、スマートなインターフェースを検討する。江戸時代だけでなく、平安~室町時代の歴史探訪を可能なように、古地図情報を増やしていけるものを最終的に目指す。観光客の選択により、好みの時代の歴史探訪が可能にして、高野山の地域史の再発見へ繋げていく。また、図書館・町役場所蔵の大正~昭和初期の古写真情報を地図ブラウザに配置し検索で、近代の町並みを確認できる機能を付与する。高野町史の基礎的なデータをアプリケーションに組み込んでいく。これは不特定多数の執筆者が投稿するデータ(テキスト、写真)を管理者が最終編集する、オープンコンテンツ機能である。
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